今回は、今まで誰もがスルーしていたかもしれない、銭湯に描かれる富士山のなぜ?を中心に紹介します。また、紅葉の絵は、タブーの一つとなっていて、縁起が悪いという話まであります。いったいどういうことなんでしょうか。
目次
銭湯に富士山はなぜ?紅葉の絵はタブーで縁起が悪い??
最近は、どんどん銭湯がなくなっていますが、今さらながら、銭湯に富士山っていったいなぜだったのか。紅葉の絵は縁起が悪いとされるのは、どんな理由があるのでしょうか。
人気のある富士山御三家
銭湯を始めとする日本の庶民文化を研究している方によると、「1位:西伊豆」・「2位:三保の松原」・「3位富士五湖」のこの三つが、富士山の背景がとして御三家なんだそうです。
この他には、「白糸の滝」も富士山の背景として使われるようですが、それほど数が多くなく、やっぱり富士山を描くとなるとこの「御三家」のどれかになるようです。
銭湯の富士山の発祥は?
銭湯の富士山の絵の発祥は大正元年(1212年)の東京の銭湯でした。その銭湯は、千代田区猿樂町にあった銭湯さんで「キカイ湯」という名前でした。ここの銭湯を経営していた方が施設を増築するときに「子供たちにも喜んで湯船に入ってほしい」と願って、浴室の壁に直接ペンキで絵を描くことを発案したようです。
依頼されたのが静岡県出身の洋画家「川越広四郎」さんで、川越さんの生まれ故郷の「富士山」を描いたのがきっかけだったそうです。
富士山の絵が評判になる
富士山は、日本の象徴でもあり、今でも信仰の対象でもありますが、当時も同じだったようで、姿かたちの美しさと末広がりといった意味でも縁起がいいとして採用しました。
これが大きな評判を呼ぶことになり、周囲の銭湯に一気に広がっていったようです。こうした由来があって、富士山の背景が銭湯に普及したんですね。そのため、東京の銭湯には富士山が多かったそうです。
特に、富士山が見える地域の銭湯になればなるほど富士山が描かれる傾向が強いようで、それ以外の地域ではあまりみかけないようです。
背景画に描けないタブー
さて、背景画には描いてはいけないとされる「三つのタブー」があるようです。それは、「猿」・「夕陽」・「紅葉」の三つです。この三つは縁起が悪いとされているようなんです。さて、それぞれの理由を見てみましょう。
猿=客が去る
夕陽=家業が沈む
紅葉=葉が赤くなる、落ちる
と、このような意味合いがあって、売り上げの減少を招いてしまう恐れがあるからということのようです。縁起の悪い絵を飾りたくないのは銭湯も同じこと。できるだけ縁起の悪い絵は避けて、商売繁盛を祈願するような絵にしたいという理由があったようです。
商売人は、縁起をかつぐともいわれますから、納得はできますよね。だから、日本人なら誰でも好ましく思う富士山が定着して人気を集めて、背景画の定番の地位を勝ち取ったということになるんですね。
男湯と女湯どちらか一つに描く
銭湯に富士山の絵が描かれた理由はわかっていただけたと思いますが、もう一つ面白いことがあります。それは、富士山の絵は通常「男湯か女湯かどちらかにしか描かない」ということです。両方に描くことはないってことですよね。
これについての理由は明らかにされていません。また、背景画で使う色は原則として「青・赤・黄・白」の4色のみのペンキだそうです。これを混ぜ合わせて必要になる色を作って描いているそうです。
さらに、ペンキが垂れてもいいように、絵は上から下へと向かって描き手早く描くのが基本になっているそうです。銭湯が全盛期を迎えたのが1960年代で、そのときの銭湯絵師も数十人はいたようですが、現在は内風呂が一般化して普及されたこともあって、現在は、現役のプロ絵師はお二人のみだそうです。
まとめ
いかがでしたか。銭湯に富士山の絵が描かれるのはなぜか?を中心に紹介しましたが、参考にしていただけると幸いです。そういえば、銭湯で飲む飲み物は、牛乳やコーヒー牛乳を飲んだりするのが当たり前だったという話もあります。銭湯は、日本独特のいい文化だからこそ、なくなるのは寂しいですよね。
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